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~翌日~
今日は、フライト当日である。
ホテルの下に行くとサニーが待っており、残りの1000バーツを渡した。

サニーは「連れて行きたいとこがある」と言うと私たちを連れて電車に乗った。

着いた先は露店だらけの場所だった。
そこにはいかにもタイのお土産っぽいものがたくさんあった。
何か買うたびにサニーが勝手にディスカウント交渉してくれた。
そんな中、ある一つの店で事件は起こる。
サニーが店主とタイ語で言い合いになっている。
店主の初老男性はとてつもなく怒っていた。
サニーにどうしたのか聞くと、「この日本人はこの金額で買うつもりだ!お前は黙っとけ!」のような趣旨のことを叫んでいると。
私はその初老男性に「バイバイ~」と腹立つ顔をして手を振った。
当然、サニーも爆笑である。
3日間も一緒に行動していると、仲も深まり絆のようなものが芽生えていた。
サニーのことを旅の道具ではなく、いつしか友達として受け入れていた。
そうしているうちに時間はあっという間に過ぎていく。
サニーが「そろそろお別れの時間だね。その前に私からプレゼントがある」と言った。

スタスタ歩くサニーが花屋の前で立ち止まり、店員に声をかけると奥からドでかい造花と生花の混合されたものが出てきた。

友人が咄嗟に「俺いらね」と私に言ってきた。
私も負けじと「俺もいらねーよ!」と叫び、それを見て喜んでいると勘違いしたサニーが優しく微笑んでいる。
言葉が通じないと言うのは何とも平和である。

ドデカ花を受け取り3人でハグをして別れた。
サニーは泣いていた。
が、私達はこのドデカゴミをどっちが持つかで争っていた。
空港までその攻防は続いた…
「あ、いいんだ?サニーの気持ち無碍にしていいんだ?」
「お前、実家にタイ土産買ってなかったよね?ね?」
「靴ひも縛り直すから一旦持って?」
などなど数多くの心理戦が繰り広げられた。
友人が空港でトイレに行った。
戻ってきた彼の手にドデカゴミはなかった。
私もそのことに触れず、歩き出そうとすると、背後から「STOP!」と聞こえ振り返ると親切な外国人がドデカゴミを友人に渡した。
礼も言わずその場を後にした私たちは、空港のゲート手前で止められた。
空港職員が「生花なので、検疫窓口で申請を通してください。」とドデカゴミを見て言った。
私達は二つ返事で「あ、捨てといてください」と答えた。
空港職員は何か話し合いを行い、廃棄に1万円かかると言い出した。
当然そんな金はなく、この期に及んでどこかに放置することもできない。
そして・・・

検疫から帰ってきたドデカゴミは更なる進化を遂げたのであった。
日本に着き、空港でハサミを借りて細かくしてごみ箱に捨てた。
帰宅後、サニーからLINEが来ていた。
「渡したお土産は生花は枯れたら取り除いて、造花だけ飾ってね。」
このLINEに「OK」と返し、タイの旅を終えた。
タイで関わった人のほとんどが温かく笑顔が絶えない人たちだった。
私達も少し、優しくなれた気がした旅であった・・・。
おしまい
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